バナナセレクション

こんなにも例外だらけの世の中で
全ての生が しぬことだけは 例外がない
これは なんて エレガントなことなのだろう


あの愛の咆哮からどれくらい経ったのだろう。
あとは思い出だけで 生きていけるよ。


絶対に理解することの出来ない相手というものがいるはずだ。
だから、じっくり話し合えばいつか分かり合えるとは限らない。

誰とでも理解し合えるのだったら
人類はずっと昔にほろびていたかもしれないね。
この、ふぞろいで美しい世界を愛したいよ。


ああ、何かを求めて さまよい歩いてしまったよ。
得るものなど何もないというのに。

今度は何かを捨てるために 放浪したいものだ。


眠りの先にも今日は追いかけてくる。
一生逃れられまい。

眠りの先の世界で
今日を塗りつぶしてしまうしかない。


ねえ、俺と会う前の君ってどんなだった?

俺はもう、君と会う前の俺のこと思い出せないや。


わたしは他の誰かの喪失とは戦わない。
そして、他の誰かはわたしの喪失とは戦わない。
このかなしみは誰にもわかるまい。
みずから消してしまった自分の居場所…


早く世界滅びればいいのに
みんな助かるのに
悼む者なきまでの滅亡を


もっと早くしんでいればよかったのに
ここに来なければよかったのに
事の発端はそれだよ
でも、無理矢理連れて来られたんだもの
針葉樹の丘を越えて
連れて来られたんだもの



そしてわたしは

本当の世界の物語を

語り始めるのだろう。


わたしはわたしの家に帰るの
ふたたびあの針葉樹の丘を越えて
わたしはわたしの家に帰るの

空はくもっていて
わたしは2階の窓から
その空を眺めるの

風が吹いてカーテンがゆらゆらゆれて
わたしは窓辺に生けた花の香りをかぐの

レンガでできたわたしの家
わたしはわたしの家に帰るの


眠りはわたしをこのさきにつれていく
むこうがわへ
もっと先の場所へ

まぶたを閉じる
そして開く
眠りに連れ去られてしまわないように

覚えていられるだろうか
すべてはあしたのわたしにまかせて
だってきっとあしたのわたしはげんきだもの
いつだってそうだもの


世界が歪み始めている
わたしは世界を救いに行かなくてはならない
しかしわたしも歪み始めている


死にたがっている人に
家族が悲しむからやめろといって
ひきとめないで

人は人のためだけに生きているのではないもの

やみくもに死からひきはなそうとしないで
それはその人をおとしめてしまう

どうしてその人が死にたがっているのか
それを聞いてあげて
お願いだから話を聞いてあげて

そうしないと、その人は死んでしまう
あなたがひきとめたから
死んでしまう


世界は素晴らしい
私に絶望をこんなにもたくさん
与えてくれる
こんなにたくさんの絶望を
与えてくれる
誕生日にだって
こんなにたくさんの贈り物を
もらったことなんてないのに
世界はこんなにもたくさんの
絶望を私に与えてくれる


愉快な愉快ないたずらおじさん
黒い服着たちびころおじさん
少女の脚を切り取って
鋼の針山用意して
かわいい少女を生けている
愉快な愉快ないたずらおじさん
わし鼻ひくひくちびころおじさん
丘の向こうのママたちが
おいしいパイを焼いてるよ
丘の斜面であら熱とって
洗濯干しにいっちゃった
いたずらおじさんそれを見て
少女の顔の皮をはぐ
きれいな少女の顔の皮
パイの上からかぶせたよ
仕事が終わったママたちは
パイを見にきて大仰天
腰を抜かして尻もちついて
一生かたわになっちゃった
愉快な愉快ないたずらおじさん
とっても優しいちびころおじさん


わたしはここにいる
あなたを愛し果てたあと
思い出は遠くゆらめき
暗い暗い雨が
記憶を溶かす
鈍色の町