バナナの残滓

そしてわたしは

本当の世界の物語を

語り始めるのだろう。


わたしはわたしの家に帰るの
ふたたびあの針葉樹の丘を越えて
わたしはわたしの家に帰るの

空はくもっていて
わたしは2階の窓から
その空を眺めるの

風が吹いてカーテンがゆらゆらゆれて
わたしは窓辺に生けた花の香りをかぐの

レンガでできたわたしの家
わたしはわたしの家に帰るの


熱く熱した石臼で工芸品を作る職人のもとへ見学に行った。
職人は素材を石臼に近づけて整形していく。
職人は藍の甚平を着た盛りの男だった。
もっと近くで見学して良いと言われ、見学者たちは石臼ににじり寄る。
石臼の熱気でその場にいる皆の額にポツポツと汗がにじみ出してくる。
突然、石臼がバランスを失い、倒れた。
わたしの隣にいた男に石臼がぶつかった。
その場が一気に騒然となった。
職人はものすごい瞬発力を発揮し、自分の手が焼けるのも構わず石臼を男から引きはがした。
わたしも慌てて、ふすまを開けて隣の部屋に火傷した男を連れていき、脚を曲げてうつ伏せに座らせた。
右脚の太ももを火傷していた。
急いで氷水を用意してきて、男の脚にそれをかけると、男はひどく苦しそうにうめいた。
わたしは片手で男の脚に氷水をかけながら、空いた手で男の背をさすってなだめた。
しばらくそうしていると、男が小さくつぶやいているのが聞こえた。目も、目も、と言っていた。
男はずっと目を閉じていた。
わたしは氷水にぬれて冷えきった指で男のまぶたを軽く触った。手がぬるくなってくると、再び氷水で冷やして何度もまぶたを冷やした。


ありがとうの21年前に君は生まれた
その絶望的な美しさを僕は愛さない


これが救いなんだ
ああみんな心の中でそういうように思っていたに違いない
その心中をおしはかることがわたしの救い

眠りはわたしをこのさきにつれていく
むこうがわへ
もっと先の場所へ

まぶたを閉じる
そして開く
眠りに連れ去られてしまわないように

覚えていられるだろうか
すべてはあしたのわたしにまかせて
だってきっとあしたのわたしはげんきだもの
いつだってそうだもの

どうしていまごろわたしのところにきたの
わたしはなにもしらず敷布団をかかえながら海に出た

しらなかったの
この道はわたしの目的地に続いていると思ったの
でも実際は海で、そしていえがあったの

そのいえのなかであなた
みんなのまえでひどいことをいったの
どれだけひどいことか


子どもたちがわたしの部屋の窓をのぞきこんでいる
男の子どもが女の子どもをどやし
お前が1番に入れよと言っている
わたしは子どもたちに何かを言った
子どもたちは何かをした


世界が歪み始めている
わたしは世界を救いに行かなくてはならない
しかしわたしも歪み始めている


しらないひとをものとしてあつかう
きっとみんなそうしてる
だってしらない人なんて風景だもの


早く死ね、カス


死にたがっている人に
家族が悲しむからやめろといって
ひきとめないで

人は人のためだけに生きているのではないもの

やみくもに死からひきはなそうとしないで
それはその人をおとしめてしまう

どうしてその人が死にたがっているのか
それを聞いてあげて
お願いだから話を聞いてあげて

そうしないと、その人は死んでしまう
あなたがひきとめたから
死んでしまう


お願い、扉よ開かないで
扉が開く度に私は恐怖におののいている
扉よ永遠に開かないで


少なくとも俺は
家族が悲しむから死ぬなと言われたために
もっと死のうと思った。


世界は素晴らしい
私に絶望をこんなにもたくさん
与えてくれる
こんなにたくさんの絶望を
与えてくれる
誕生日にだって
こんなにたくさんの贈り物を
もらったことなんてないのに
世界はこんなにもたくさんの
絶望を私に与えてくれる


あいつの鳩は俺が殺したんだ。
仲の良いふりをして
最初から敵だったんだ。
のろまな鳩をつらまえて
首をひねってそれで終わりだ。

掃除屋の坊主が眼鏡を持ち上げて
俺を見る。
こいつはきっと全てを知っていやがる。
風呂に鳩の羽を詰まらせたかもしれん。
あの汚い風呂を
この小僧だけがピカピカにできる。
ムカつく小僧だ。

俺はあいつといつもジャンクフードを食べる。
俺があいつの鳩を殺しても
俺たちは仲良くいつもの席で
ハンバーガーとポテトを食らうんだ。

トラッシュボックスにゴミを捨てたら
あの金網を越えていく
俺があいつの鳩を殺した。


100年後に皆死んでいる
それでも今に投資するのが
人間の流行らしい。
女を殺したい
つけもの石で
女を殴り殺したい。


愉快な愉快ないたずらおじさん
黒い服着たちびころおじさん
少女の脚を切り取って
鋼の針山用意して
かわいい少女を生けている
愉快な愉快ないたずらおじさん
わし鼻ひくひくちびころおじさん
丘の向こうのママたちが
おいしいパイを焼いてるよ
丘の斜面であら熱とって
洗濯干しにいっちゃった
いたずらおじさんそれを見て
少女の顔の皮をはぐ
きれいな少女の顔の皮
パイの上からかぶせたよ
仕事が終わったママたちは
パイを見にきて大仰天
腰を抜かして尻もちついて
一生かたわになっちゃった
愉快な愉快ないたずらおじさん
とっても優しいちびころおじさん


みんな連れてこられたんだね
だからわたしも
もう帰りたいとは言わないよ。


この願い叶わぬならば
もろともに 死なん この身よ

身体、お前は動けない
わたしが動かしているからだ

わたしがお前を滅ぼすことなど
とても簡単なことなのだよ


流行りの服をきて着飾ったきれいな女の頭を
つけもの石で思い切り殴ってぐちゃぐちゃにしたら
すごく楽しいだろうなと思って
それを想像してたら笑いが止まらなくなったよ。

つけもの石で女を殴ることを何度も考えて
その日はとても軽やかに笑ったよ。

流行りの服をきて着飾ったきれいな女を見ると
とても気分が悪くなるよ。
死ね糞ビッチって呪いをかけるよ。
それが普通の人でも気分が悪くなるよ。
きっと普通の人なんだろうと思うが
気分が悪くなるよ。

一体自分は何に対して嫌悪を抱いているんだろうね?

糞ビッチ死ね。

まあつけもの石で女を殺す前に
自分が死んだ方が世界ためになるだろうね。
早く死にたいね。

糞ビッチ死ね糞ビッチ死ね糞ビッチ死ね


今年は生きる希望(笑)みたいなのに
すがりかけているよ。
ほんと死ねばいいのに。

ちょっとそこの君、
自分の頭をつけもの石で殴るのは難しいから、さすがに
部屋にあるロープ全部捨てたけど後悔している。
でもまだ縄跳びがあるさ!!

そうやってまだだらだらと生きるつもりなんだろう
はやく死ねばいいのに。


自分死ね
死ね!!!
うんこを喉につまらせて死ね!
肥溜めで死ね!!


俺の松果線はどこにある?
なあ、誰かそれ切り離してくれよ。
お願いだからみんな戻ってきてくれよ。


わたしはここにいる
あなたを愛し果てたあと
思い出は遠くゆらめき
暗い暗い雨が
記憶を溶かす
鈍色の町


きっとわたしはくずになるのでしょう
だから皆
わたしを怒るのでしょう

でも
既に
わたしは
くず


この女死ね
この女死ね
この女死ね
この女死ね
この女死ね
この女死ね
この女が死ねば
全て済むこと
この女が死ねば良かったのに


懐かしい人の夢を見た

遠雷を聞きながら
わたしは紅茶を飲む
今日は11月19日
でも昨日は3月2日だったような気がする

遠雷が聞こえる…


今日はとても幸せな日だった
きっとこんな日が再び私に訪れる
もう目を閉じて安らかに眠ろう
たとえ明日がどんなに辛くとも
きっとこんな日が再び私に訪れる

さあ、ゴミを出そう、生ゴミを
私が食べたバナナの皮も
忘れずに捨てておいてね

さよなら!バナナ!
私はもうバナナなんて食べない。


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私は再び港を訪れた
今日の海は凪いでいる、明日も、明後日も
永遠の凪に私は飛びこんで、飲み込まれて
死ぬ。私は死ぬ。
この港で私は死ぬ。
レンガの家などもう必要ない。






END