『池辺のメルヘン おしまい』

 

ラララ ララリラ ララルララ

ラララ ララリラ ララルララ

砂金の歌とともに

高いたかい大空を鳥がとんでいくのです

風をきって雲をぬけて

光のように鳥はとんでいくのです

ラララ ララリラ・・・

そのとがったくちばしの先で

あのちいさな砂金が日の光をあびて

きらきらと きらきらと かがやいておりました

 

すてき すてきよ

空はなんてきれいな青をしているのかしら

あの暗い池の青とはちがうわ

ねえ ここからみおろす森はなんてきれいなのかしら

池の底の小石についた藻とは大違いだわ

 

そうして 空を高舞う大鳥は

砂金をつれてどこまでも

どこまでも

とんでいくようにおもわれました

 

ところが鳥はおなかがすいて

地をかけるうさぎを見つけると

さっと舞いおり口をひらきました

砂金は宙になげだされました

 

あなたなんということをするの

どうしてあたしを捨ててしまうの

 

砂金がどんなに叫んでも

鳥はうさぎをつらまえて

ふたたび空高く舞いあがり

みえないところにいってしまいました

 

砂金はきらきらとまたたきながら

まっすぐ森へ落ちていきました

そして暗く淋しい森の

スギの切株の上に

落ちました

砂金はひとりぼっちになってしまいました

砂金はしくしくなきました

日が沈み日が昇り

そしてまた日が沈み

また日が昇ります

 

あたしずっとあの池の底に沈んでいたかったわ

あそこもここのように暗くて淋しいところだったけれど

あたしにはあの人がいたわ

ずっとあの人が話すのを聞いていたかったわ

 

森は静かで

また日が沈み

また日が昇りました

 

あたしここで死んでしまうのかしら

あの人がいないから

死んでしまいたいわ

 

その時草をふむ音がきこえました

だれかがおとずれたのです

 

やあ砂金じゃないか

こんなところでなにをしているんだい

 

あなたはだあれ

あたししらないわ

 

わしは金細工職人

おまえの友達だよ

 

あたししらないわ

 

おまえがしらなくとも

わしはおまえのことを

おまえよりも よく

しっているのだぞ

おまえをここからつれさって

美しい金の首飾りにしてやろう

他の砂金といっしょにして

ピカピカになるまで

みがいてやろう

そうしてキラキラのダイアとルビーをちりばめて

おまえはおひめさまの首飾りになるのだよ

 

いやよ やめてちょうだい

あたしこのままでいたいわ

あたしはあたしを生きることを選ぶの

だってあの人が愛してくれたのは

あたしだったのだから

 

しかし金細工職人は砂金をつまみあげると

ふところにしまいこみ工房へつれさってしまいました

そうして砂金はほかの砂金たちといっしょに

大きななべに放りこまれました

 

あつい あつい あつい

 

しだいに砂金は

自分のことがわからなくなりました

 

あつい あつい あつい

 

自分が砂金で

かつて池の底に沈んでいたことも

逍遥の男の声もおもだちも

楽しく話していたことも

砂金の中から溶け出していきました

 

あつい あつい あつい

 

砂金はすっかり溶けて ただの

金のかたまりになってしまいました

砂金は死んでしまいました

 

 

 

 

 

今日はおひめさまの婚礼の日です

若く美しいおひめさまの胸元で

砂金のなきがらが輝いていました

ひとびとはおひめさまと

首飾りの美しさを

ほめたたえました

 

おひめさまのもとへ

王子さまがやってきました

王子さまはひざまずき

おひめさまの手の甲に

くちづけました

立ち上がった王子さまは

おひめさまから首飾りを外しました

そうして王子さまは首飾りを

たなごころでそっと包みました

 

ここにいたんだね

僕の大事な砂金

ずっとずっと

探していたのだよ

 

それはなつかしい

やさしい声でした

王子さまは逍遥の男だったのです

 

お前は死んでしまったのだね

お前は鉱物だったのに

死んでしまったのだね

哀れな砂金

せめて安らかに

これからは

ずっと

お前のそばに

 

 

 

(背景画像 「NOA PROJECT」様 )