生体染色戦隊 ソメレンジャー mission01−2

3人は変身を解いてから、
何かの役に立つかもしれないと、
百葉箱の中の携帯用ガイガー・カウンターをアイテムとして手に入れ、
ばりばり文系の作者を無視して先に進み始めた。
ちょっとした畑や菜園を待つ家々が立ち並ぶところまでくると辺りを見回す。
随分人気が無い。

 

レオン「随分unpopularだって。」

エディ「…こんなところであまり面白くないネタを出すと読者が逃げてしまう。少し慎め。」

レオン「(泣)」

アル 「おや?」


と、3人は向こうから何か声がするのに気がついた。
とても元気な声だ。数人いることがわかる。
3人は一応身を潜めながら近づいていった・・・。

木の陰に隠れて様子を見てみると、どうやら役所の前で募金活動をしているようだった。
3人の男が箱を抱えて声を張り上げている。
 

3人 「緑のバネ募金にご協力お願いしまーす。」

エディ「(緑のバネ・・・)」

レオン「あの右の二人・・・不協和音だね。」

エディ「どうでもええわ(――#)」

アル 「おやおや。」

エディ「おそらくあれが次の刺客に違いないな。こんな閑散としたところで募金活動をしているなんて怪しすぎる。」

アル 「3対3ならさっきよりも楽かもね。」

エディ「油断するな。しかし…さっきのように無駄に戦うのも疲れるな。」

アル 「じゃあ味方のふりをして潜入するのはどうかな。」

エディ「名案だ。しかしうまくいくだろうか・・・」

アル 「やるだけ損じゃないよ。」

エディ「そうだな。行こう。」


3人は3人のもとへ近づいていった。
3人は3人の姿を目に留めると再び口をそろえて言った。
うわっ。
主語が意味不明ですね。

3人 「緑のバネ募金にご協力お願いしまーす。」

エディ「すみませんが。」

???「はいなんでしょう?」

エディ「わたしたち、ウロッド大学の原子力研究所から派遣された者なんですが・・・ABC兵器に関する場所へ行きたいのですが場所がわからなくて困っているんです。ご存知では?」

???「ああ!ABCヘイキですね。やっといらっしゃいましたか。お待ちしておりました。勿論ご案内しますよ。・・・して合言葉は?」

エディ「・・・。」

アル 「・・・・・・。」

レオン「“ソメレンジャー”。」

2人 「(うわ!ばかーーー!!)」

???「間違いありませんね。ご案内いたしましょう。」

エディ「(何故だ・・・!?)」

レオン「(何事も真摯な態度で臨めば成し得るということさ。)」

エディ「(そういう問題じゃないだろ。)」

???「そういえば・・・紹介遅れました。わたくし案内人のエドワード=テラーと申します。」

エディ「(うわっ。名前かぶってる・・・)」

テラー「そしてこちらがレオ=シラード。」

レオン「(ちょっとかぶったね。)」

テラー「それからユージン=ヴィグナー。」

アル 「(かすりもしないよ。)」

テラー「我々は原子力研究所に雇われたハンガリーのユダヤ人です。よろしくお願いします。」

アル 「複雑な設定だね・・・。」

テラー「では行きましょう。」


3人は笑みを浮かべると3人を先導する。
3人はとりあえずほっとしながら3人に従った。
2度ネタかよ!

道なりに進み、突き当りを左に曲がると更に進む。
しばらくいくと、林道の入り口らしきところに、ひとつ人家とは違う建物が建っていた。
テラーたちは立ち止まった。

 
テラー「ここです。」

3人 「・・・!!」

 

そこには・・・・・・

 

 ABC平気

 

という看板が掲げられていた。

 

エディ「ここが?ここは?」

テラー「ABCヘイキに関わるとおっしゃいましたね。」

エディ「はい、・・・しかしABC平気とは・・・一体なんですかここは。」

テラー「村一番の英会話教室です。」

3人 「ガーン。」

テラー「アルファベットすら分からない人でも気軽に入室できるようにと、ABC平気という教室名がつけられました。」

3人 「は、はあ・・・。」

テラー「それでは我々は任務完了ですね!ではさようなら。また機会あればお会いしましょう!」

 

3人はまるで3人を見捨てるかのように立ち去った。
残された3人はABC平気教室の前に呆然と立ち尽くした。

 

エディ「しくじったな。振り出しか・・・。」

アル 「おやおや。」

レオン「ねえねえ。張り紙がしてあるよ。講師募集中だって。ソメレンジャーから転職しない?」

エディ「そもそもソメレンジャーって職業だったのか?くだらんこと言ってないで、また一からやり直すぞ。」

 

そう言ってエディは立ち去ろうとした。その時だ。

 

アル 「あ!これは!」

エディ「ん?どうしたアル。」

レオン「なに中国人ぶってるの?僕へのあてつけ?」

エディ「名前を呼んだんだよ!お前今回すごいつまらないぞ。」

レオン「(泣)」

アル 「見て。その張り紙の右下・・・。」

 

言われたところを見てみるとこう書いてあった。

 

 原水爆菌糸運動 本部より♪

 

3人 「・・・。」

エディ「何だ。誤植か。」

レオン「ええっ!?冷たいなあ、もう。これはきっと敵からのメッセージさ!そう、原子爆弾、水素爆弾、生物兵器・・・これらを暗示しているんだ!」

エディ「化学兵器は尽く無視だな。・・・というより菌類は関係ないだろ!!!馬鹿か?」

アル 「・・・どちらにしろやはりさっきの3人は敵の手下だと思うよ。どこか言葉の端々がおかしかった。合言葉まで聞いてきたしね。まあでも、あれは儀式的なものさ。きっと僕たちを懐中に誘い込んでそこで始末するつもりなんじゃないかな。」

エディ「成程。ということは、このくだらん英会話教室の中に何か黒幕へ通じる手がかりがあるってことだな。」

レオン「ようし、そういうことなら早速入ってみようよ。」

 

3人はABC平気教室の扉を豪快に開けた。
中の様子はいたって普通の学校の教室のようなところだった。
そして並んだ生徒机に5人の男女が座っていた。
3人は先手必勝!!迷わず変身した。

 

エディ「ニュートラル・レッド!」

レオン「ナイル・ブルー!」

アル 「ビスマルク・ブラウン!」

3人 「生体染色戦隊 ソメレンジャー! 参上!」

1人目「ふ、ふ、ふ。お前らがソメレンジャーか。待ちわびたぞ。見たところ3人しかいないようだが?」

レオン「そうだよ。」

2人目「ふはは、マジかよ!3人とかしょっぺー!既に頭数でオレらの勝ちっていう。」

レオン「えっ・・・あ、あの、実は今日はメチレンブルーとヤヌスグリーンは有給休暇で・・・。」

エディ「おい、勝手に仲間増やすなよ・・・」

3人目「へえ・・・。それにしてもなかなかいい男が揃ってるじゃない。」

レオン「そりゃあね。この世で僕らよりかっこいいのはケマル・パシャくらいさ。」

エディ「いや、ケマルはあの世だろ。」

4人目「なんだ?こいつら漫才師か?」

レオン「あ、はい。」

エディ「違うわ!」

アル 「おやおや。」

5人目「・・・調子が狂う奴らだ。しかし、あの田んぼを抜けてきたとなると、どうやら戦闘には長けているようだ。油断禁物ってとこか。」

 

混沌とした会話が続いたが、ついに5人は立ち上がると3人に対峙する。

 

1人目「見ての通り、我々は第二の刺客!」

4人目「老人下痢等とは違い正々堂々と貴様らを消してやる。」

1人目「行くぞ!・・・危機!」

2人目「物騒!」

3人目「剣呑!」

4人目「累卵!」

5人目「危殆!」

5人 「五危険戦隊 5デンジャー!」

エディ「・・・。」

アル 「・・・・・・。」

レオン「うわあ、5レンジャーだあ。後楽園で僕と握手!」

危機 「違う!5レンジャーではなく5デンジャーだ。5つの危機だ。」

レオン「なぁんだニセモノか。」

エディ「小物だな。」

危殆 「貴様らに言われたくないわ!」

物騒 「お遊びはそこまでだぜぇ。」

危機 「いざ、勝負!」

剣呑 「・・・といきたいところだけど、ここ、ちょっと狭すぎるわね。机あるし。」

累卵 「そうだな。我々の技の力が半減してしまう。」

危殆 「ならば、建物を破壊するまでだ・・・うおおおおおおお!!」

3人 「!!」

危殆の凄まじい咆哮に、ABC平気教室の壁ががたがたと振動し始め、ついにガラガラという音をたてて建物が崩壊し始めた。
3人は持ち前の運動能力でそれぞれ瓦礫を回避すると外に避難した。

 

エディ「なんて力だ!叫んだだけで建物を崩すとは!」

アル 「激しい戦いになりそうだね。」

レオン「5人とも気配を消している。くる!気をつけるんだ。」

剣呑 「甘いわよ!くらいなさい!」

累卵 「必殺!三つ葉のクローバー!!!」

3人 「しまった・・・!!!」

 

声がしたかと思うと、3人のもとに大量の三つ葉のクローバーが落ちてきた。

 

レオン「うわあすごい!三つ葉のクローバーがこんなに沢山っ・・・・・・あれ?三つ葉?」

エディ「って、三つ葉のクローバーは思いっきり普通だろ!今てっきり四つ葉だと思ったぜ。」

アル 「違う、これは・・・まさか!」

累卵 「ふん。一人気づいたようだな。そう、それはごく普通一般の三つ葉のクローバー。つまりこの技は戦士の身体能力をごく普通一般レベルまで下げる状態変化系の魔術なのだ。」

エディ「さっき“必殺”って言わなかったか?」

危機 「黙れ。結果的に必殺なのだ。」

物騒 「へへへ・・・口ごたえできるのも今のうちだぜえ・・・これからアンちゃんらをありんこみたいに潰しちまうんだからよぉ!」

エディ「くっ・・・相当厄介だ。」

 

5デンジャーは目にも留まらぬ速さで3人を取り囲んだ。

 

ソメレンジャー大ピーンチ!!!

 

物騒 「さあさあ、じっくりいたぶっちゃう?」

危機 「ふん。ではゲームのルールを説明しよう。」

アル 「ゲームの・・・ルール・・・?」

危機 「貴様らにはこれから我々一人ずつが出すクイズに答えてもらう。」

3人 「は?」

剣呑 「制限時間は1問につき5秒。もし間違えたり、タイムオーバーになったらあなたたちの負け。」

累卵 「全問正解できたならお前たちの目当ての本部に連れて行ってやる。」

危殆 「まあ無理だろうけどな。」

3人 「・・・・・・。」

エディ「・・・一つ質問していいか?」

危機 「なんだ。」

エディ「これは要するに頭脳戦だな?」

危機 「そうだ。我々は流血を好まん。」

エディ「じゃあ、俺たちの身体能力をザコレベルまで引き下げたのには何の意味があるんだ?」

危機 「そ、それはっ!貴様らが抵抗しないようにするためだ!」

エディ「もう一つ。あの建物を崩す必要はあったのか?」

物騒 「ごちゃごちゃうるせえんだよ、袋のネズミちゃんよぉ!アンちゃんら、生体染色とかいってるし、そっち系の人間だべ?だったらうちらの知識量にかかったら即死っつーの。」

アル 「それはどうかな・・・」

レオン「人を肩書きで判断するなんて、浅い人たちだね。」

エディ「いいぞ、5デンジャー。どこからでもかかって来い。」

危機 「ちっ・・・その得意顔、歪ませてやる!!」

 

3人の不敵な様子に5デンジャーは嚇怒し、襲い掛かってきた!!(?)

 

物騒 「まずは俺様からの問題。・・・イタリア生まれのフランスの革命家で、バブーフと一緒に反政府陰謀を計画して流刑になり、1828年に『平等ためのいわゆるバブーフの陰謀』を書いたのはだーれだ?」

エディ「ブオナロッティ。」

物騒 「な・・・!」

エディ「ん?なんだ?フルネームのほうがよかったか?」

物騒 「て、てめえ・・・!」

エディ「ブランキについても言及しろなんて言うなよ。歴史は苦手なんだ。」

物騒 「な、なんでだ!お前ら理系だろ?なんでこんなマニアックなの知ってんだよ!反則だ!」

危機 「物騒。見苦しいぞ。お前の負けだ。身を引け。」

物騒 「そ、そんなああ!376勝0敗の俺様があああ!ぐはあ!」

 

物騒は泡を吹いて倒れた。その376勝の相手は一体誰なんだ・・・?

 

累卵 「やるな。お前たちを少々甘く見すぎていたようだ。政治史がだめなら言語史だ!行くぞ!・・・ギリシア生まれのキリスト教伝道者、キリルが作った古代スラブ語のアルファベットは?」

レオン「グラゴール文字。」

累卵 「!!!!!!!!!!!!!」

レオン「え?まさか僕が“キリル文字”って答えるかと思ったの?冗談やめてよ。」

累卵 「俺はこのネタで200人以上を倒してきたというのに・・・お前は・・・!く・・・くはは・・・ぎゃははああ!!がああああああ!ぎごがほっ!ほってんとっと!!」

 

累卵はくるくる舞うと林の中へ猛突進していき、見えなくなった。

 

危機 「くそ、累卵は一番プライド高いから精神が破壊された・・・!」

剣呑 「そんな・・・!あんなにクールで素敵だった累卵が!?許さないわ!次はあたしよ!絶対に負けないわ!・・・スペインのギター奏者であるセゴビアの誕生日はいつ?さあ、答えられるものなら答えてみなさい!」

アル 「2月17日さ。」

剣呑 「なんですって!?」

アル 「あれ、違った?コレルリと同じ日だったと思うけど。」

剣呑 「・・・負けたわ。わたし負けましたわ!」

アル 「おやおや。」

/* 20170610add セゴビアの誕生日は2月21日なので、これは誤答です。間違ったまま10年ほど掲載していました。申し訳ありません。 */

 

  さりげなく回文で棄て台詞を残した剣呑は累卵を追って林道を駆けていった。

 

危殆 「残るは2人・・・。ソメレンジャーよ。ここまで我々をてこずらせたのはお前たちが始めてだ。敬意を表する。」

エディ「そりゃどうも。」

危殆 「だが、これはどうだ!!・・・結婚25周年の記念日のことを銀婚式、50周年を金婚式というが、11年目は?」

レオン「鋼鉄婚式。」

危殆 「う、うわああああ!な、なんだ貴様!化け物か!!」

アル 「最後まで失礼な人たちだね。」

レオン「もう、やんなっちゃうよ。」

危殆 「・・・だめだ・・・危機・・・こいつら・・・強すぎる・・・。」

危機 「危殆!お前はよくやった!気をしっかり持て!」

危殆 「・・・危機・・・我らがリーダー、・・・叡智英邁のお前なら、こいつらを倒せるはずだ・・・後は・・・頼んだぞ・・・・・・。」

危機 「危殆――――――!」

 

危殆は危機の腕の中で息を引き取った。なんでやねん!!?

 

危機 「・・・。」

3人 「・・・。」

危機 「まさか、お前たちがそこまで該博だとはおもわなんだ。しかし、これで終わりだ。」

エディ「どうぞ、叡智英邁の危機さん。」

危機 「ちっ。なめるなよ。制限時間が5秒だということも忘れるな。」

アル 「あー。底が見えたな。エディ、頼んだよ。」

危機 「む!?貴様・・・!まあいい、それでは最後の問題だ!心して聞け!・・・底面の半径を1、上面の半径を1−x、高さ4xの直円錐台Aと、底面の半径1−x/2、上面の半径1/2、高さ1−xの直円錐台Bがある。ただし、0≦x≦1である。AとBの体積の和をV(x)とするとき、V(x)の最大値を求めよ。」

エディ「151π/108」

危機 「なんだとおおおおおお!!!何故そんな!何故瞬時に答えられる!!?貴様正気か!?」

エディ「さて、俺たちの勝ちのようだな。さあ、約束通りABC兵器製造の本部に連れて行ってもらおうか。」

危機 「くそっ・・・外道が・・・!」

 

5デンジャーを倒した!!?早っ!

危機はおとなしく3人を林道へと導いた。
この林の向こうに本部があるようだ。
いよいよ黒幕の登場だ!!

 

続く