バナナ返歌

 人を見に里に降って「ニンゲン、オロカ」とわざわざ言うような悪趣味を裡にひそめて生きています。
 夜空を埋める星々が美しいだなんて嘘です、死ぬときに放つ一瞬の閃火を延々と大量に見せられてその景色で悦に入れるなんてどうにも幸せな――端的にいえば鈍麻な感性であることです。
 米袋に唐辛子を入れるのを忘れたときに涌く小さな蛾を1日に1匹殺しています。虫を殺すときは半意識的に心を無にしますが、これがいつまでたっても慣れません。(ああ、生きているものを殺してしまったな)という漠とした、反省じみた感情が毎回かすめていきます。虫だったものはティッシュペーパーに包まれたままくずかごに放られ、なかったことにされます。私のことも、99.99%のあなたの中からなかったことにしてください。0.01%のあなただけは、覚えていてもよいですよ。
 そこにある足場はどんなですか。小学校の鉄棒の真下のくぼんだ土に雨水が溜まったところかのようですか。それとも岩山の鎖場のようですか。それとも海草のからみつく濁った海の底かのようですか。それとも私には説明しても通じないようなところですか。
 多くのものと断絶された中で、ぴかりと光る稲妻だけは同じものを見たような気がしています。その刹那だけは、お互い真っ黒なシルエットになって、ほんの1つの共通点を愛でているのでしょう。

 

ナム様から「バナナセレクション」への返歌を頂きました!