2017年9月9日(土)@東京文化会館
セルゲイ・カスプロフ氏 ピアノ・リサイタルに行った記録

[会場へ]
去年の東京公演神奈川公演を聴きに行って
氏の演奏が気に入ったので今年の公演も行くことにした。

9月に入って涼しくなってきていたのに
この日は妙に日差しが強く、暑い日だった。
上野はとてもにぎわっている。どこもかしこも人だらけ。
少し早く着いたのでロビーで開場を待つ。

[開演前]
13:30開場、14:00開演。
いつも通り、調律師さんを拝むために開場後すぐにホールに入る。
小さめの音で調整中だった。作業はすぐに終わって去ってしまった。
本日のピアノはYAMAHA。「桃色YAMAHAくん」と呼ぶことにする。
最高音部の音が筒状のイメージ。
今日も開演までピアノの下半身を眺めて過ごす。
東京文化会館のベルは宇宙的な金属音。

[前半]
前半の曲目。
・ハイドン アンダンテと変奏曲 ヘ短調 Hob. XVU-6
・ベートーヴェン ソナタ 第23番 ヘ短調 Op.57 ≪熱情≫

今日一番楽しみにしていたのはハイドン。
美音である。この音を聴きに来た。
かなり自由で情熱的だったので驚いた。
一部の音が強調されていたが、あれはどういう意味なんだろう。
もっとちゃんと予習して来ればよかった。
ペダリングがとても参考になった。

曲の終わりに飛出し拍手が起きた。
演奏が完全に終わる前に一瞬、パラッと拍手がわいたのだ。
その後、曲が終わっても拍手のタイミングがつかめず
じっと待っていたらそのままベートーヴェンのソナタが始まった。

ホール内が緊張に包まれているのを感じた。
拍が乱れ、ハーモニーはぺしゃんこになり、パッセージは宙を浮いた。
わたしにはそのように聞こえた。

[休憩]
極度の緊張で心臓がつぶれそうだ。
さっきのソナタはわたしの聞き間違いだったのではなかろうか……
などと思っていると、調律師さんが出てくる。
ほんの微調整で終わり、戻っていく。
後半が始まるまで、桃色YAMAHAくんの下半身を凝視して過ごす。

[後半]
後半の曲目。
・ベルク ソナタ ロ短調 Op.1
・リスト ソナタ ロ短調 S.178

ベルクのソナタはとても説得力があった。
こういう曲が苦手で予習をほとんどしなかったのだが
モチーフを分かりやすく描いてくれたのですんなり聴くことができた。

リストのソナタも長大で難しいと思っていたが
こちらもモチーフを前面に出してくれたので追いやすかった。
並々ならぬ技術と自由自在の音色に感嘆した。
「ビィィーン!!」というコンバスのような轟音!!
桃色YAMAHAくんにあんな音を出させるなんて
相当凄まじい打鍵なんだろうな。

[アンコール]
アンコールの曲目。
・ショパン スケルツォ 1番 ロ短調 Op.20
・スカルラッティ ソナタ ホ長調 K.380
・ヴィラ・ロボス 赤ちゃんの一族 第1組曲「お人形たち」7.道化人形

ショパンが流れ出した途端、一気に緊張が解けた。
アンコールは終始和やかで軽やかな雰囲気だった。
ハイドンの他に聴きたかったのがスカルラッティ。
アンコールで弾いてくれるかなと期待していたので嬉しかった。
これがほんとうに朗らかで最高だった。おもちゃの兵隊さんの行進みたい。
道化人形は定番なのだろうか。相変わらずの業務用ミシンっぷりだった。

[閉演後]
氏のプログラムの組み方は「なぜこの取り合わせ?」と思うが
聴いてみると不思議としっくりくる。
前半はヘ短調、後半はロ短調で合わせているところにもこだわりを感じた。
この人は録音よりライブの方が好きなのでまた来年も来てほしい。

 

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