2018年5月17日(木)@サントリーホール
佐渡裕 & トーンキュンストラー管弦楽団 日本ツアー
のコンサートに行った記録

[開演前]
日が暮れても一向に涼しくならず、ムシムシした空気がまとわりついてくる暑い日だった。
溜池山王駅を出てサントリーホールへ赴く。初めて行くホールだ。
付近はビジネス街なのか、意識高そうなビジネスメンが行き交い、ハキハキと仕事の電話をしている。
開場30分前にホール前のアーク・カラヤン広場に到着すると
既にたくさんの人々がカフェのテラス席や噴水前の段に座って開場を待っていた。
天を見上げると周囲の背の高いビルディングがそそり立ち、覆いかぶさってくるようだった。

18:30、開場の時間になるとホール入口上部の壁に設置された
パイプオルゴールが自動演奏を始める。
その音を聞きながら中に入る。
洗練された広大なホワイエに圧倒される。
忍び足なんてしなくても足音が鳴らないふかふかの赤いじゅうたんが敷き詰められている。
いつかこんな場所でかくれんぼをしてみたいものだ。

座席へ向かう。
去年の12月にチケットを購入したので、どのあたりの席にしたのかすっかり忘れていた。
確認すると、なんとステージ後方席だった。
なぜこんな場所を選んだのか自分でもわからない。
この場所は音を聴くのにはあまり最適ではないように思うのだが、どうだろう。
サントリーホールはなんか設計がすごそうだし大丈夫かな。
ひとまず腰を落ち着ける。じゅうたんと同じくふかふかの座席だ。
頭上を見上げると、オクラの断面のようなシャンデリアが吊り下がっている。

開演まで、オケの編成や配置などを確認する。
コンバスの人が1人2人、音を出している。
ハープの人はチューナーを見ながらチューニングをしている。
古い鍵盤楽器用のチューニングハンマーのような、T字型の器具を使っていた。

鐘のような音のベルが鳴る。
紀尾井ホール同様、補聴器への注意を含むアナウンスだった。
音楽に特化したホールはそういうところまで言及するのかもしれない。

開演前にマオカラーに身を包んだ佐渡氏がひとり
マイク片手にステージに出てきて何かを話し始める。
しかし、音が響きすぎてほとんど聞き取れなかった。
オケの楽員たちが皆仲が良いというのと、
楽器がウィーン系であるというのだけかろうじて理解できた。
お話が終わると、いよいよ演奏が始まる。

[前半]
トーンキュンストラー管弦楽団の楽員の人たちがステージに上がってくる。
男性は皆ホワイトタイ、女性は黒の上下で自由ないでたち。

前半の曲目。
・バーンスタイン キャンディード序曲
・ベートーヴェン 交響曲 第6番 ヘ長調 Op.68「田園」

今日は後半のプログラム目当てで来たので
前半の曲目はまったく予習をしないで聴くことになってしまった。
弦も管も音色が非常に美しくて統一感があった。
田園の2楽章が特に気に入った。なんだか楽しげだった。
ベートーヴェンの交響曲を聞くと寝てしまう体質だが今日は寝なかった。

[休憩]
後半はピアノ・コンチェルトだ。
ステージにピアノが現れる瞬間を見たかったが、早めに用を足したかったので離席。
戻ってくるとピアノはセッティング済みだった。
ロゴが見えず、どこの子なのかよくわからない。
ペダル突かい棒がスタインウェイっぽいと思ったが確信はない。
音は水色系だった。

[後半]
後半の曲目。
・ブラームス ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 Op.83

これを聴きに来た。
ソリストはわたしの憧れの王子様、ヴァレリー・アファナシエフ。
(なぜ王子なのかは去年のコンサートの記録を参照)
佐渡氏と共に王子がステージに上がってくる。
相変わらずの部屋着スタイルとだらしのないお腹。
にこやかに、なんとなく客席全体を見回すと椅子に座る。

音楽が始まるやいなや、凄まじい不安感に襲われる。
王子の構築する世界とオケの世界が乖離している。
わたしは一体どこに存在すればよいのか?
…そうして長い間宙ぶらりんにさせられていたが
3楽章が始まった途端、急に世界が一つに融合した。
それはそれは美しい世界だった……

[アンコール]
アンコールの曲目。
・ショパン マズルカ Op.67-4 イ短調
・ブラームス ハンガリー舞曲 第5番 ト短調

マズルカは、去年のリサイタルでもアンコールに弾いていたが
ほとんど聴けなかったので今日聴くことができて嬉しかった。
最初のポーンという単音から既に異次元。
なんという美音。これは正面から聞きたかったなあ。

ハンガリー舞曲が流れ出すと聴衆が大興奮の大盛り上がり。
手拍子まで沸き起こる(途中で止む)
熱狂の中演奏会は終わる。

[閉演後]
21時頃終わると思っていたが、時計を見ると21時半。
長い演奏会だった。中身も濃かった。大満足だ。

 
余談だが……
東京の主要なホールでの演奏会には、入り口でチラシを配る専門の業者さんがいて
毎度大量のチラシの入った袋を手渡してくれるのだが、今日はその量がとてつもなく多かった。
因みに、『オーケストラの職人たち』(岩城宏之著 文春文庫 2005年)という本によると
このチラシを入れているビニル袋の原材料はコンドームと同じだそうだ。
確かに雰囲気は似ている。

独り言のページに戻る
演奏会の記録に戻る