2018年10月9日(火)@サントリーホール
ヴァレリー・アファナシエフ ピアノ・リサイタル2018に行った記録

[開演前]
長く厳しい夏が過ぎ去り、やっとこさ秋めいて涼しくなってきたが
動くと少し汗ばむような、そんな日だった。
サントリーホールに来るのは5月17日以来。
憧れの王子様、アファナシエフ氏の音を聞くのも同日以来。
(なぜ王子なのかは去年のコンサートの記録を参照)
前回と同じ開場・開演時間だったが、
日が落ちるのが早く、人の顔が分からないくらい薄暗かった。
ホール前の広場につくと開場待ちの人でにぎわっている。

18:30、開場の時間になるとホール入口のパイプオルゴールが鳴り出すが
ろくに聞かずにホールの中に飛び込む。
指定席なのに何故そんなに急ぐのかというと
最終調整をしている調律師さんを見たいからだ。
しかし、今回は調律師さんにはお目にかかれなかった。

席に着くといつも通りピアノの下半身を凝視しながら開演を待つ。
今日のピアノは水色みのある明るい緑のスタインウェイくんだった。

[前半]
いよいよ王子の登場。いつもの部屋着スタイル。
袖からピアノの元へ歩いてくる様子を見てギョッとする。
しかめっ面で、ゆっくり、ゆっくり、足を踏み出す。
5月の時もゆっくり歩いて登場していたが、
見ていてこんなに恐怖を感じなかったような…気のせいだろうか。
ピアノのところまでくると、どうやらお辞儀のつもりらしい首の動きを見せ、
背もたれ付きの椅子にどっかりと座りこむ。
もしかすると腰が悪いのかもしれない。
髪を撫でつけたり、袖をいじったりして、ついに弾き始める。

前半の曲目。
・シューベルト 3つのピアノ曲(即興曲集)D946
  第1曲 アレグロ・アッサイ
  第2曲 アレグレット
  第3曲 アレグロ

音が鳴り始めてギョッとする。
ぺしゃんこである。驚くほどぺしゃんこである。
王子はCDですら立体感を感じさせる空間を構築するのに、これは一体…
ドギマギしながら耳を傾けていると、徐々に空気がふっくらしてきて、
第1曲の最後の方はいつもの王子の音になっていた。
よかった、びっくりした。
ホールと聴衆の関係なんかもあって、出だしは色々あるのかもしれないな。
その後は落ち着いて聞くことができた。緑色がとてもきれい。

[休憩]
すっとんでホールを出る。
用を足し、水分補給をしてからホールに戻ると、
調律師さんが高音部を直している。
しまった、これを見てから外に出ればよかった。

[後半]
後半の曲目。
・シューベルト ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D960
  第1楽章 モルト・モデラート
  第2楽章 アンダンテ・ソステヌート
  第3楽章 スケルツォ、アレグロ・ヴィヴァーチェ・コン・デリカテッツァ
  第4楽章 アレグロ・マ・ノン・トロッポ

このソナタは王子の持ち曲というイメージがある。
まさにそんな感じであった。
…実に不思議な曲である。
長調だからといって、必ずしも明るいわけではないということを教えてくれる。
不穏で、どこか不気味である。
前半の朗らかで明るい音とは全く違う。
オケならともかく、ピアノでこのくすんだ色味が出るのがすごい。
どうすればあのような音が鳴るのだろうか。
かなり明確に死の臭いがする。

最後、弾き終える前に席を立つような雑さがあった。
割とすぐに席を立つタイプの人だが
流石に今回のはちょっとひどかったな。

ゆっくり、ゆっくり袖に戻っていく。
鳴りやまぬ拍手に3回程登場して首だけのお辞儀をする。
体調が悪いのではないかと不安になる。
次に行く4日後のさいたま公演が最後だ、というくらいの気持ちで臨んだ方がよさそうだ。
いや、最後でなくとも毎回そういう気持ちで聞きたいものではあるが…

[閉演後]
シューベルトのソナタをライブで聞けて良かった…ずっと聞いてみたかったんだ。
帰宅して風呂にも入らず寝た。
妙に心がざわついていた…

次は13日のさいたま芸術劇場の公演に行くよ

 

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